本計画は,大阪市で初めて認定を受けた「全室個室・ユニットケア型介護福祉施設」で100名定員である。老人福祉施設として 「個室に住む」議論は様々であるが,反対意見は 老人の閉じこもり・孤独感の問題と 介護する側の手間が増えるという点に由来する。
計画に当たりプライバシーを保ち個人の時間をすごすことのできる個室空間と,セミパブリックな空間であるリビング・ダイニングの居住性を確保し,昼間は気軽に自由に家庭の雰囲気ですごすことのできるくつろぎとふれあいの快適スペースを提供することで それらの問題解決を試みた。
全体的な配置は,1階に事務所,厨房などの管理部門や近隣との交流を促す娯楽室,2階から6階を1フロア2ユニットの居室階とし最上階に屋上庭園を配置した。ユニット間に吹抜けでたい面させ,これによって各ユニットは四周を外部に開放される。吹抜けを通して,各ユニットの様子が伺えうことができ,緊急の応援が可能となる。ユニット内部は中庭と南面開口に面したリビング・ダイニングを中心に10の個室が配置されている。
居住者に対してはリビング・ダイニングのユニットにおける中心性をさりげなく表現すると同時に,介護する側の目の行き届きやすい空間構成となっている。
敷地は街区のほぼ半分のスペースであるが,道路から建物までのオープンスペースの緑地によって近隣建物への圧迫感を和らげている。